精神科・内科・漢方内科クリニック

佐瀬医院

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こころの学校

ここでは、こころやからだについて、院長が毎月メッセージを送ります。

第13回『腸のお土を蘇らせる』

こころの学校 

もう、何年もテレビを見ない生活をしているため世事にとことん疎くなっている私ですが、勉強先
の先生から、「奇跡のリンゴの木村さんて凄いでしょ」と何気に言われて何も知らず、慌てて本を
読み、映画も観させていただいたのがついこのあいだの話です。

震撼しました。
今でも震撼しています。
これをどうお伝えすればいいでしょうか。
まずは、ご存知の方も多いかも知れませんが、木村さんのお話を私なりにするところから始めます。
木村さんはリンゴ農家に婿入りしましたが、市場に出せる綺麗なリンゴを作るには年十六回、
様々な種類の農薬を撒かねばならず、奥さんが農薬過敏症で毎回ひどく苦しむのを見てある時、
無農薬無肥料の自然農法を試みることを決意します。
その結果は、惨憺たるものでした。
ありとあらゆる病気と害虫にやられ、ありとあらゆる試みをし、ありとあらゆる失敗をしました。
7年間、全くリンゴの花は咲かず、畑は差し押さえられ、家族とも極貧に落ち、病害虫の巣窟と
なった畑は周囲から疎まれ、孤立し、木も枯れかかってしまいました。

万策尽きた彼は死を決意し、夜、山に入り首を吊ろうとします。
ロープを木に引っ掛けようとしますが、失敗し向こう側に落ちてしまいます。
すると、目の先に野生の林檎の木が3本、青々を生えているではありませんか。
思わず駆け寄って見ると、足元の土が全く違うことに気がつきます。
ふかふかでいい匂いなんです。唖然として閃きます。
「りんごさんよお。なんでここまで教えてくれなかったのよ。なんで死んでお詫びをしなきゃ
いけないところまで黙っていたのよー」
そういって彼は山を駆け下ります。

それから彼は、必死で土を調べあげます。
山の土と畑の土では、温度が全く違うこと、微生物の量も全く違うこと、下草を刈ってしまう事で
生態系の多様性がなくなり微生物が増えず、土壌に必要な養分が循環しなくなっていることに
気がつきます。
(もう一度、山にその木を見に行ったら、あの夜はりんごにしか見えなかった木が、
実はドングリだったそうです。)

さらに研究を重ね、彼が無農薬無肥料無除草の奇跡のりんごを手に入れるままでに11年を
要しました。
苦労はこれだけでは済まないのですが、このりんごが奇跡と言われる所以の一つに「腐らない」
というのがあります。
一般栽培のりんごも有機栽培のりんごも放置すると腐ってしまいます。
木村さんの自然栽培のりんごはいい匂いを放ちながら枯れていくだけだそうです。
一般栽培のりんごの木は農薬を撒かないとあっという間に病気にやられてしまいます。
木村さんのりんごの木は、病気になるとその部分だけ自らの葉を切り取るように落とし、
その分だけ新しく葉が育ちます。

これを知った時、私は愕然としてしまいました。
そういうことです。
そういうことなんです。
そっくりそのまま、私たちの話です。
私たちは、みんな一般栽培のりんごです。
私たちが薬と称しているものは、農薬です。
ものすごく優れているものもありますが、でも農薬です。
私は日々農薬を撒く人です。
それで治したと勘違いしてる人です。
でも、それが悪かというとそうは言えないんです。
私たちみんな、それが無いと腐ってしまう。
そこが問題なんです。

私をりんごの木に例えましょう。
光はこころです。
ですから、こころが曇ったり荒れたりしていると光は届かず病気になります。
養分も必要です。
りんごは根から、私たちは口から取ります。
農薬の撒かれた土は微生物が育たないため何も分解できず何も産生できません。
だから硬く締まり、逐一肥料をやらないとすぐ枯れてしまいます。
私ちの食べ物は防腐剤を筆頭とした様々な食品添加物により腸内細菌は減少し、さらに清潔さを
求め無菌を追求したため免疫力は低下し、結果あらゆるアレルギー反応に苦しめられるように
なっています。そのため薬が必要になります。
腸内フローラと最近よく言われますが、移動する私たちにとっては、腸内細菌叢が体の大事な
お土なんです。
だから薬をやめても、お土をなんとかしないとありとあらゆる病気にやられてしまいます。
その代表が自己免疫疾患とアレルギーでしょう。

自然栽培が必要です。
有機も充分とは言えません。
抜け穴があることや未熟な堆肥がかえって問題になることがあります。
ヨーグルトだけ食べてもダメなんです。多様性が必要なんです。
あらゆる細菌も虫も動物も全てが共生してできた豊かな土に奇跡のりんごはなりました。
人類が長年かけて培ってきた3万種ともいう腸内細菌のバランスが崩れているのです。
「雑菌と寄生虫がアレルギーを防いできた」とずっと訴えておられる藤田紘一郎先生の
言うとおりです。
善玉か悪玉かとレッテルと貼らずに、私たちも全てと共生する必要があったのです。

私と言う体のお土を健康にするには、健康な地球の土から取れた作物を食べることです。
そうして腸内細菌を増やすんです。
結局、地球を健康にすることが私たちを健康にすること。
当たり前のことに震撼とさせられます。

医者である前に、人としてこのことを真摯に受け止め、行動する人間でありたいと思います。

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